先生ありがとう。

昨日の授業のことである。
一生懸命学んでいた子どもたちの一人がいきなりこんなことを言い出した。


「ぼく、前まで勉強がすきじゃなかったけど、すごく勉強がすきになったんだ。先生のおかげだよ。先生ありがとう。」


正直びっくりした。
「そんなことないよ。あなたが一生懸命がんばったからだよ。あなたのがんばりのおかげだよ。」


そう声をかけると、その子は首をふる。


「せんせいが、教えてくれたからだよ。先生ありがとう。」


すると、教室の子どもたちが何人もうなずいて口々に言い出した。


「わたしも小学校に入る前まで、さんすうのさくらんぼなんてできなかったけど、先生が教えてくれたからできるようになったよ。」
「わたしもね。入った時より字がとてもうまくなったよ。」
「ぼくね。こくごがにがてだったけど、こんなにいっぱい書けるようになったんだよ。」
「ぼくも。」
「わたしも。」・・・。
教室がそんな声であふれる。
みんな嬉しそうにニコニコしながら話し始める。



びっくりした。なんだなんだ・・・。
正直とまどった。


私の教育現場の出発点は中学校だ。
「先生。ありがとう。」
こんなセリフは卒業式という最後の場面に聞くもの。
そう思っていた。
感じていても最後の最後までとっておいて、そっと告げるもの。
そんなふうに考えていた。



だから、こどもたちのこのまっすぐな言葉におどろいた。
彼らは本当にまっすぐなんだ。
思ったこと、感じたこと。それをその場でまっすぐに伝えようとする。
自分の感じたことをありのままに、正直に。
その純粋さに心を射抜かれたのだ。
嬉しくもあり、すまなくもあった。
まだまだ子どもたちのことが見えていないな。
そんな風に感じた。


中学校現場にいる時に感じたこと。
それは、
「教師にできることはそれほど多くはない」ということ。
しかし、この教育観が少し変化し始めていることを感じている。


小学校1年生の担任をさせていただいて、学んだことがたくさんある。
今までのやり方が通用しないと感じた。
自分の教育観がガラガラと音を立てて崩れ去ったと感じたこともあった。
しかし、崩れた中から何かが生まれてくるのを感じている。

やっと自分らしくいけそうだ。
トンネルの出口が見えてきた。