根気強く・粘り強く

学級通信153号より


どんな状況でも学び続ける子ども達を育てたい。
しかし、無理矢理学習させてもそこには辿り着けない。


子ども達が心の底から
「学ぶって楽しい!」「学ばない自分は自分らしくない」
と思えなければ学びの足は止まります。


学ぶことに心地よさを感じるように
子ども達のコンフォートゾーンを高めていかなければなりません。
しかし、子ども達のコンフォートゾーンを高めるのは難しいものです。



無理矢理強制しすぎてもだめ。
かといって放っておいてもだめ。



親も教師も悩みは同じ。ではどうすればいいのでしょうか?



大切なことはたくさんありますが、
主に4つのことが大切だと私は思います。



その4つとは?
?子ども達に「志」を決定させ、常にそれを意識させる言葉かけをすること
?子どもの行為が「志」に繋がる行為か常に問いかけること
?常に肯定的に励まし続けること
?子ども達がどの位置にいるのかはっきりと見せてあげること




?について。
以前も書きましたが「志」とは「夢」に「公」(おおやけ)を足したものです。
子ども達の脳に目的地(志)をインプットさせなければなりません。
ナビに目的地をインプットして初めて目的地への道筋が示されます。
「志」が定まらずに歩んでも道に迷うだけ。
まずはっきりとなりたい自分を決定させることが大切です。
そこがスタートライン。
目的地を決めると自分が進むべき道が浮かび上がってきます。




?について
「志」を決めても子ども達はうまく歩みを進めることができません。
勉強の仕方が雑。提出物がしっかり出せない。学習に対する意識が低い…。
このような状況がかなり続きます。
これは「志」を決めたものの、
その「志」がしっかりと自分の意識に埋め込まれていない証拠です。
脳が目的地として認識しきれていないのです。
脳が本気でそこに向かいたいと思えていないのです。
叱りつけても、どなりつけても効果はありません。
脳がその目的地に辿り着こうと思えていないのですから
やらないのは当然のことなのです。


ではどうすれば脳がその「志」を目的地として認識するのでしょうか?
それは「常に教師が問いかけ意識させる」しかありません。
問いかけ考えさせることで何度も何度も意識させるのです。



「君の志って?」
「君は今こういう状況。そんな自分でその志に辿りつけるの?」
「そのためには今何をすべき?」



一度や二度では変わりません。何ヶ月もかかるかもしれません。
それでも何度も何度も問いかけ、語りかけ、
子ども達の意識に「志」を刻み付けていく必要があります。



?について
「肯定的に励まし続ける」というと
「叱ってはいけない」ととらえがちですが決してそんなことはありません。
叱りつけてもいいのです。
しかし相手を否定し、
自信をそぎ落とすような叱り方はしてはいけないということです。
相手を肯定的に励ましながら叱るとは?



「君は何にでもなれる力をもっている。すばらしい志もある。なのに自分のそのすばらしい可能性をドブに捨てている。そんなことでいいのか?」

「君の素晴らしい志に繋がらない行動。そんな事を続ける君は君らしくない。本当の君はもっといい顔をしている。そう思わないかい?」



仮に「別にこれでいい」「そんな風に思わない」と言われてもいいのです。


「そうか。先生はそうは思わないけどな。君は無限の可能性をもっていると先生は思う。いつかきっと自分でも気づける時がくるよ。」


と返してやればいい。
叱られているのに、怒られているのに、励まされている、応援されているという感覚。これは子どもの可能性を本気で信じていなければできないものです。



?について
子ども達は自分の学びが良いものなのか、
イマイチなのかが判断できないものです。
いい勉強をしているつもりでも量が圧倒的に少なかったり、
表面だけなぞった浅い学習だったり、質が低い学習だったり…。
子ども達は本気でやっているつもりなのです。
しかし「志」に辿り着くとは言えない学びをしていたりします。
それは何をどのぐらいやれば「志」に辿り着けるのかを
子ども達がわかっていない証拠です。
教師は子ども達に何をどのぐらいすべきなのかをきちんと見せてあげる必要があります。


自分は学年でどのぐらいの位置にいるのか?
県内でどれぐらいの位置にいるのか?
国内でどれぐらいの位置にいるのか?
世界ではどんな人材が求められているのか?
自分の「志」を叶えるためにはどれぐらいの学力が必要なのか?
自分が日々学んでいるクラスの学力はどれぐらいなのか?
行きたい高校・大学はどれぐらいの学力が必要なのか?…。


ありとあらゆるものを見せてあげるべきです。
自分がいる位置が見えた時、
子ども達は自分がどれぐらい努力すべきなのかが見えてくるのです。
「一生懸命やろう」とか「生き生きと学ぼう」とかそういうあいまいな尺度で子ども達の学びを評価してはいけないと思います。




「十人十色」色々な子ども達がいます。
「志」を定めた瞬間に自ら力強く進み出す子。
「志」を決めてもなかなか前へ進めない子。
言葉かけをするとがんばれるがそれが持続しない子。
「志」すらうまく定められない子…。



全然タイプが違う子ども達が集まる「学級」
そのすべての子のコンフォートゾーンを引き上げるのにはかなりの時間がかかるものです。
我々大人達は根気強く、粘り強く子ども達を育てていかねばなりません。
「育てる」という言葉。奥深いものです。