スタートをきった数=かしこさ

「スタートを切った数。それがかしこさにつながっていくんだよ」
昨日の算数の時間。子どもたちにそんなことを話した。
私たちの日常にはたくさんのスタートラインがある。
かしこい子ほど、スタートをきるのが上手だ。


Aくん。勉強は得意ではない。しかし、スタートをきるのがばつぐんにうまい。
昨日の算数は問題演習。
時間になり「よし。始めるよ。」と私が言った瞬間に鉛筆をもち、Aくんは学びをスタートさせる。
問題を解き終わっても、そこで立ち止まらない。
すぐに私のもとに歩み寄り、◯をつけてもらう。


問題はまちがっていた。
「あちゃ〜!」と頭をかきながらすぐさま席へ戻る。そしてまた再スタート。
彼は何度も何度も小さなスタートとゴールを積み重ねていく。
大切なのは「勉強ができる」「問題に正解する」ことなんかじゃない。
この小さなスタートを何度も積み重ねていことが大切なんだ。


「ゴールすることが大切」とは言わない。
「ゴール」を意識させることは大切。
しかし、そこにこだわるととたんに足取りは重くなる。
大切なのは「スタートラインにもう一度立てること」
「あっ。この学びではだめだな。もう一度スタートをきろう。」
と思えること。


子どもたちをじっとみる。するといろいろな子どもたちがいる。
スタートを何度も何度も積み重ねていける子。
スタートをした後、立ち止まりしゃがみこんでしまう子。
スタートをした後、逆方向に走り出してしまう子。
スタートはきるが、ゴールせずにちがうスタートをきる子。
スタートすらきろうとしない子。


どの子にも語りかける言葉は同じだ。
「スタートをきった数。それがかしこさだよ。」


私の授業は自由度が高い。
子どもたちが自分で考え、自分の言葉で学びをつくっていく場面がたくさんある。
だから「スタート」する感覚をつかむ。
自分がどれだけ「スタート」をきることができているかを常に客観視させていく。


スタートをきれない子には「スタートをきること」の大切さを語る。
一度スタートしたら思い切り認める。しゃがみこんだらまた語る。
その子の目が変わる。また学びへのスタートをきる。
「どうして集中できないの?」
とは言わない。
「あなたは今日2度スタートをきることができたね」という。


「スタートをきった数だけかしこくなれる」 スタートした先が成功したか、失敗したか、うれしかったか、悲しかったか。 そんなことは関係はない。 スタートをきったことに価値があるんだ。

子どもたち。大人になるにつれて、様々な出来事が起きるだろう。
悲しいこともあるだろう。理不尽なこともあるだろう。もやもやした気持ちになることもあるだろう。
でも大切なのはそんな状態でも「スタート」をきること。


ゴール地点なんかわからない。
そんな気持ちでスタートをきってもいい。
スタートをきればゴールが見えてくる。
自分の目指すゴールと違う方向に進んでいれば、また再スタートすればいい。
スタートをきっただけかしこくなれる。