読み聞かせから始める道徳

夜寝る前の出来事。
「一冊だけ絵本を読んであげるよ。なんでもいいからもっておいでね。」
息子がもってきたのは「おさるのジョージ
そして娘がもってきたのはなんと「道徳の教科書」
昨日娘は道徳の教科書を持ち帰ってきたのだ。

娘に聞いた。
「いいよ。この中のどのお話がいいの?」
「う〜ん。いっぱいあった迷っちゃうな〜。」
そういいながら選んだのが「黄色いベンチ」というお話。

雨上がりの公園で紙飛行機をとばしていた2人の男の子。
ついつい夢中になって、ベンチの上にのって紙飛行機をとばしてしまう。
ベンチはドロドロ。その後、そのベンチを使った小さい女の子のお尻がドロドロになってしまい、2人がハッとするというお話。

息子、娘は真剣に聞いている。読み進めていくうちに、つぶやき始める。
「あ〜いけないんだ。」
「ベンチの上にのっちゃいけないんだよね。」
「うん。ベンチはすわるもの。だよね。」
「くつをぬげば立ってもいいんじゃない?」
「う〜ん。でもくつをぬいでも上に立っちゃだめなんじゃない?」

2人の会話を聞いているとおもしろい。
授業で大人数を相手にすると、こういうつぶやきをついつい聞き逃してしまう。
新鮮な気持ちで2人のつぶやきを聞いていた。
そこで聞いてみた。
「2人はさ。ついルールを破っちゃったなぁって時はある?」

[ない!ぼくはいつも守ってるよ!」
息子は胸をはって堂々と答える。彼はまだ自分を客観視できていないようだ(笑)
「おいっ!」と心で突っ込みながら娘を見る。
すると
「私は、たまに破っちゃう時があるな。廊下とか走っちゃったりする時があるし…」

「へえ〜。そうなんだ。ついうっかりルールを破っちゃう時って誰にでもあるよね。お父さんもあるなぁ。この前なんてね…」
なんておしゃべりが続く。まったりとした楽しい時間だった。

「道徳」ってなんなのかな?
そんな風に考えさせられる出来事だった。
「道徳」を「授業」できっちりやろうとするから苦しくなるのかな。
でも、そんなに身構えることなくこうして「読み聞かせ」というスタートラインでも、会話をもとに思考は深まっていく。

「誰が悪い。」
「こうしなきゃいけない。」
ではない。大切なのは
「ぼくにもね。」「わたしもさぁ。」
と自分の日常につなげていくこと。

道徳の教科書「を」学ぶのではなく。
道徳の教科書「で」学ぶ。
読み聞かせというゆるいスタートラインでも全然かまわないのではないか?
今回道徳の教科書を使って子どもたちと対話できたことでそんなことをふと感じた。