(6)常に自分が主役の45分に

協同学習においてもっとも注意していかなければならないのは、なんとなく「わかったつもり」になってしまうことです。
一生懸命学び合っているように見える。
しかし、学び合ったあとにどの程度定着しているか確認してみると、さっぱり理解していなかった。協同学習を行うとそれがよくあることだということがわかるでしょう。
これは決して子どもたちが手を抜いているわけではありません。彼らは本気で学んでいるのです。しかし、自分が話し合っているものが何に繋がっていくのかが理解できていないため、学びが最終的に飛び散ってしまい、形に残らなくなっているのです。
ではどのようにすれば子どもたちが「わかったつもり」になることを減らしていけるのでしょうか?
ここで先ほど述べた「インプットとアウトプットをつなげていくこと」が重要になってきます。
しかし、はじめからそれを子どもたちに求めてもうまくできるわけはありません。そこでインプット(聴くこと)とアウトプット(表現すること)をつなげる経験を何度も何度も積み重ねていくことが大切になってきます。
そこで大切になってくるのが
「学び合うこと」(インプット)

「書き表すこと」(アウトプット)
の二つです。
私の授業は基本的に子どもたちが学び合う活動を中心に授業が進んでいきます。
しかし、必ず最後にその時間に学んだことをしっかりと書き表す活動を入れます。
課題の確認をする(インプット)

学び合う(インプット・アウトプット)

書き表す(アウトプット)

書いたことをもとに学び合う(インプット・アウトプット)

それについて考えたことを書き表す(アウトプット)

そこで生まれた違い、問いをもとに学び合う(インプット・アウトプット)


このように常に「学び合うこと」と「書くこと」が繋がり合っていく場を保証していく。
それによって子どもたちは自然と両者の間を往復していくようになるのです。
このように学び合った(インプット)からこそ、書く(アウトプット)ことができる。
書く(アウトプット)ことができたから、それをもとに再度学び合える(インプット)できる。
そのような経験を積み重ねていく中で子どもたちは自然に良質のインアウトプットを行えるようになるのです。
以下はこのような経験を毎日積み重ねていった子どもたちの感想です。
★子どもたちの感想より
私は以前は作文を、新聞を書くたび、泣く泣く書いていました。書くことが苦手で、イラストでうめたりしてなんとか書き切っていました。しかし、作文ではイラストが使えず、原稿用紙3分の2が現界の時がしばしばありました。しかし、今回みんなで話し合い、自分の意見をまとめるようになりました。はじめはやはり気が進まなかったりしながらも書いてみると作文もレポートも楽しく感じたり、書いているうちに頭ですらすらまとまっていったり…。ついには無意識の内に作文が書けるようになりました。習い事では企画、提案書まで書き、ほめられるほどにまで成長しました。やはり人と意見を分かち合い、共有してこその成長だと思いました。
前は書き方が分からなかったり、あまり書く機会がなかったりしたから書くことは少し苦手でした。でも今年になって作文を書く機会が多くなり、レポートも始まりました。友達と意見交換をしあったからこそ自分なりにすごく成長した!書き方がわかるようになった!わたしはそう思います。何度もほぼ毎日のようにレポートや作文が書けて、本当にいい経験になり、書く力がついてきました。最初はあまりうまくまとめられなかったけど、同性、異性関係なく話し合えた。それがゆいいつ書く力が伸びた理由だと私は思います。心のオープン。はじめは男女バラバラで話すことがすごく楽しくなったわけではなかったけれど、今は前よりも学校にくること自体が楽しくなりました。というのは、話しづらい人がいなくなったということです。こんなに成長できた年ははじめてだと思います。
「きちんと学ぶ」(インプット)から「書ける」(アウトプット)という価値観は今までも数多くありました。
だから、いかにわからせるか?いかに教えるか?という議論が盛んに行われてきたのでしょう。
しかし、我々の行うアプローチは全く逆です。それは
「書く」ことによって「学ぶ」ことができるということ。
そして
「学ぶ」からこそ「書く」ことができるということ。
これらは決して一方通行ではなく、お互いに繋がり合い、双方向に往復を続けてこそ意味があるものなのでしょう。
インプットとアウトプットが繋がり合っている授業に「思考停止」の時間はありません。
思考停止の時間を減らしていくことで、子どもたちを最大限に伸ばしていくことができるのです。