瞬間を切り取る

原発事故。制限される毎日。
つらい状況で過ごす子ども達。
この地で暮らす子ども達の言葉には力がある。
しかし、それを伝える術をもたなければ、言葉は力を失う。


子ども達の言葉に「魂」をこめたい。
そして、その言葉が世の中に伝わっていく感覚をつかませたい。
そんな思いで1学期は書くことの指導に力を入れてきた。


クラスのほとんどの子ども達は15分で600字をらくらくまとめられるようになった。「量」の面では合格。
しかし、「質」の面では合格とは言えない。
足りないものはたくさんある。
語彙力、構成力、エピソード力…


「10秒間くらいの出来事を原稿用紙1枚にまとめられるかい?」
子ども達によく言う言葉。
「瞬間を切り取るんだ。写真のように。」


しかし、子ども達はそれがなかなかできない。
職員室でぼやいた。
「子ども達は瞬間を切り取れないなぁ。。語彙力が足りないのかな?まだまだだなぁ…。」


それを横で聞いていた主任が一言。


「それって絵も同じじゃない?」
「絵もパッと思い出して描けって言われても難しいじゃない?」
「それを私達が難しく思うのと同じ、子ども達も場面を切り取って文章を書くのは難しいんだろうね。」


なるほど。
自分はある程度の文は書ける。
書けてしまうからこそ書けない子ども達の気持ちが理解できなくなっていた。


主任は続ける。
「私達はさぁ。教師だから良い作文に触れる機会が多いけれど、子ども達はそういう機会が少ないじゃない?子ども達に良い作品にもっともっと触れさせてあげなきゃね。」


書けない裏には何か理由がある。
わかっていたつもりだが、それから目をそむけていた。
そんな自分にはっと気づかされた。


作文指導に近道はない。
足りない所は2学期に。
やるべきことがぼんやり見えてきた。きがする。