加速

学級通信131号より↓↓


「みんなと同じ5年生の子ども達が受験に向けて勉強をしてるんだよ。」


そんな言葉から話を始めた。
最近、私は視野を広げた話を子ども達に語るようにしている。
いや、語らねばならないと考えている。



「みんなは中学受験なんて知らないでしょ?まして興味もないでしょ?
 でも、日本中に、今この瞬間にも受験勉強をしながら夢の実現のためにがんばっている人がいる。
 関東で働く先生の知り合いで6年生を担任している人がいるんだ。
その先生のクラスでは、最近受験でクラスから人がごっそりいない状態なんだって。
みんなはそんな状況を想像できるかい?
受験勉強をしている人達が偉いとは言わない。受験をするからすごいとも私は思わない。
 でも、みんなはそんな人達と少なくとも10年以内に勝負をすることになる。
 それは大学受験かもしれないし、就職活動かもしれない。
みんな自分がやりたいことをするために、夢を実現するために本気でぶつかりあう。
そして、夢をつかめるのはほんの一握り。
そんな勝負に君達は『勝てるっ!!』て胸をはって思えるかい?」



子ども達は首をふる。ためいきをつく者もいる。



「じゃあ、今みんなができることって何?関東へ行って、受験でもする?そんなこと不可能だよね?
みんなはここ(福島)にいながらできることをするしかない。
じゃあ、どうやったら『勝てるっ!』って胸をはれる自分になれる??
個人戦では絶対勝てないでしょ?じゃあどうするか。それはわかっているよね?
うちらにできることはチームとして 学びの質をあげていくことだけ。
勉強は孤独にするものではないから。
伸びたい人は好きなだけ伸びていけばいい。歩みを止めるならそれでもいい。
でもそれは結果として自分に帰ってくる。
勉強は人のためにやるんじゃない。怒られてやるものでもない。
自分にとって大切だと思うからやるんだ。そうでしょ?」



真剣に話を聞く子ども達。
次の日、子ども達の変化はすぐに行動となって表れた。


算数の時間。
私は、今学んでいる単元の問題を、難易度の低いものから高いものまで印刷し、
いつでも取り組めるようにしている。
子ども達はたとえ、それが5年生の学びを飛び越えていても、関連があるならばとことん挑戦していく。


前までは「ここまでできればいいや。」と自分自身で限界を決める人が多かった。
しかし、最近は違う。多くの人達が「ハイクラス」(受験問題集)にまで手を出し始めたのだ。



男の子「先生。この問題のあとに書いてある『○○中』ってなんですか?」
わたし「それは、○○中学の受験問題に出題されましたよってことだよ。」
男の子「へぇ〜。こんな難しい問題が出るんだ〜。負けられないな〜。がんばろ〜!」



受験問題を身近に感じるようになったことで、自分達の教科書に書いてある内容が抑えるべき最低のラインであることに気づいたのです。
そして、何よりも嬉しいのが、テストに対する認識が変わったこと。



男の子「先生。今度僕たちがやる業者テストは受験問題で出題されるレベルではないんですよね?」
わたし「もちろん。このテストは最低ライン。こんな問題が受験に出たらみんな満点だよね。
    それじゃあ、差がつかない。全員合格になっちゃうよ〜。受験問題はもっともっと難しいよ。」
男の子「なるほど〜。じゃあ、このテストは100点が当たり前ですね!がんばります!」



「みんな。このテストの内容で100点とって嬉しい?ほめられて嬉しい??」


と聞くとみんなが首を振るようになったのだ。
大切なのは点数ではない。どこまでも伸びたいと願う心。
たとえ100点でも、自分が満足できる内容でなければ意味がない。
手をぬいて「この程度でいいや。」と思う学習なら胸をはれる100点ではないのだ。
最低限の内容さえ抑えればいい。わがクラスにはそんな風に思う子がいなくなりつつある。


成長はさらに加速していく。
先日行った算数のテスト(角柱と円柱)で今までなしえなかった全員80点以上を達成。
しかも、達成したテストは私がつくったテスト問題。
業者テストより難易度が高いテストだった。


80点以上だったことをクラスに伝えた。しかし、大きな歓声はない。
「へぇ〜。」「お〜。」という程度。
前だったら大歓声が上がったはずなのに。


「そうだよね。こんな程度でみんなは満足しないよね。
 大歓声が上がらないのは、『このテストで100点をとったってまだまだ甘い!』
ってみんながわかっている何よりの証拠だね。
みんなの学習に対する考えが一段階上のレベルへ上がったってこと。
これは全員が80点を達成したことよりも嬉しい!みんな!成長してるね!」


その後、こんなことを言っている男の子がいました。


「『みんなが』、『全員が』ってがんばらなかったけど、なんか目標が達成できちゃった。不思議〜。」


その通りだなぁと思いました。
一人ひとりが自分の学びのために人と関わり始めたことによってたたきだされた結果。
本来、学ぶってこういうことなのでしょうね。


さあ、まとめの時期だ。はりきって学び直そう!