目の前の人の幸せ
私の母は、保険の営業の仕事をしている。
雨の日も、風の日も、雪の日も
休むことなく、朝から仕事へ出かけていく。
母はもう少しで60歳になる。
毎日歩き回る仕事。体力的にもつらいはず。
しかし、母の口から「つらい」「やりたくない」などという弱音を聞いたことがない。
口にする言葉は
「仕事を通していろいろな人とつながることができて、幸せだ。」
「いつも誰かに支えていただいている。ありがたい。」
という感謝の言葉。
保険の営業というと、「ガンガン自分の保険の良さをアピールする」
と思われるかもしれない。
しかし、母は幸せの押し売りは決してしない。
保険の説明を求められればする程度だ。
しかし、営業の成績は会社のトップクラス。
「どうしてそんなに成績がいいの?」と私が聞いても、母は首をかしげるだけ。
「不思議なんだけど、なんか思いもしない所から、紹介をいただけるの。
みんなに支えてもらっているんだねぇ・・・。」
母はただただ、話を聞くことにしているらしい。
相手がどんな人でも、うなずいて、親身になって話をきく。
経済的に厳しい、病院に通っている・・・など人によっては保険に入りたくても入れない人もいる。
しかし、母はそんな人の話もバッサリ切ることなく話を聞く。
それが母の仕事のしかた。
すると、思いがけないタイミングで多くの人から連絡を受けるらしい。
「○○さん(母の名前)から保険に入ると○○さんの成績になるの?」
とか
「知り合いに赤ちゃんが産まれたから、紹介しておいたよ!」
などというように。
「目の前にいる人を大切にすること。それが一番大切なんだよ。
それがめぐりめぐって自分の所に帰ってくる。ありがたいことだね。」
「目の前の人を大切にすること」
という言葉が胸にささった。
「良い成績を出さなきゃ」とか「早く広めなきゃ」と焦るのではなく
目の前にいる人の幸せを全力で願う。
そんなことできていたかなぁ…?
自分にとって、目の前の人とは、誰だろう?
「家族」「クラスの子ども達」かな?
目の前の人をおろそかにして、何かを広めようとはしていないかな?
そんなことをふと考えた。
理想を抱き、それにむかって日々歩み続けることも大切。
しかし、足元を見つめ、誠実に向かい合うことも大切。
やっぱりバランスなんだなぁ。