優しい優しい話し合い

学級通信115号より↓↓



「発表ができる班は、黒板に○をつけてね。
   全部の班に○がついたら発表会をはじめよう!」


そんな言葉で始まった音楽の授業。練習する曲は「わたり鳥と少年」
リコーダーと歌とピアノを合わせてみんなの前で発表するのだ。
授業開始から数十分後・・・。


「できた〜!!」
ひと班、またひと班と○が増えていく。
しかし、最後のひと班だけ、どうしても○がつかない。
様子をみると班の中で何かもめているようだ。


みんな心配になって、その班の様子を見にいく。
しかし、なかなか問題は解決しない。
「どうしたものかなぁ…。」と考えるわたし。そこに大きな声が響き渡る。


「みんな〜!こっちに集合して〜!!」
このままではいけないと思った数名が全員を黒板の前に集めたのだ。
1人の女の子が口を開く。


「5つの班のうち4つの班は終わったよね。
 でも全部の班ができないと意味がないよね?
 多分、今もめている班はケンカして心が病気になっているんだよ。
 終わった班は、ケンカしている班の人達の心を手術してあげなきゃ。
 せっかくのうちのクラスのチームワークがばらばらになっちゃう。
 ケンカしている班がどうしたら楽しく発表できるか考えてあげようよ。」


その言葉でみんなが1つになった。
なにがいやだったのか?どうしたら仲直りできるのか?
みんなが知恵をしぼって考えた。
しかし、一度こじれた関係をなかなか元にもどすことができない。


なかなか進展しない状況。そこで1人の女の子が話をし始めた。

「前にいた学校での話なんだけどさ。長縄大会があったのね。
 でも長縄が飛べない子が2人いたの。
 その子達は初め、練習をいやがっていたんだけど、
 なんとか練習して跳べるようになったんだ。
 大会が終わった後、その子達に聞いてみたんだ。
 どうして跳べるようになったのか?って。そしたらその子達はこう言ったんだ。
 みんなに応援してもらったり、ほめてもらえたりするのがうれしかったんだって。
 もしかしたらケンカした班は練習の時、
 お互いに悪い所ばかり言い合っていたんじゃない?
 お互いに良いところを伝え合ってみたら?」


その時周りからこんな声があがった。


「絆の輪のありがとうみつけと同じだね!」
「ケンカした人で丸くなってありがとうみつけしようよ!」


ケンカをした5人が丸くなる。
そして、その周りをみんなが取り囲む。


「〜してくれてありがとう。」
少し照れながら飛び出す「ありがとう」
そのたびに、周りのメンバーから歓声があがる。


ありがとうみつけが終わるころにはケンカした人達の表情もやわらかくなっていた。
和やかな雰囲気になった所で、ごめんなさいタイム。
授業時間も休み時間も、たくさん使ってしまった。
けれど、かけがえのない絆を手にした瞬間だった。


私はじっと見ていた。じっと聞いていた。
「どうしようかな?」「手助けをしたほうがいいかな?」
でも手助けは必要なかった。すべて彼らが解決したのだ。


「発表する時間がなくなっちゃうかもしれないけれどさ、
   ケンカをほおっておいて発表会をしても意味ないよね?」
「誰が悪いとか、悪い人を探すんじゃなくて、どうしたら仲直りできるか考えようよ。」
「どうしてほしい?何でも聞くよ。言ってみて。」


優しさあふれる言葉が次々と飛び出した。
ケンカをしたことを誰一人責めることはなかった。
休み時間をつぶしてでも、仲直りできるよう全員が話し合いを続けた子ども達。
教えるどころか、たくさんのことを教えられた。


いつからこんな優しい話し合いができるようになったのだろう。
頼もしくもあり、寂しくもあり…。

じ〜んと胸をうつ、なんとも言えない気持ちになった音楽の時間でした。